小説や映画、漫画の紹介。  パソコンや地域の話題。
kirakira
2010
04/05
08:04:37
 福寿草と

  猫が知ってる

   春溜まり



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kirakira
kirakira
20:48:38
<前書 この小説は「鳥人達の伝説」と対になっている小説です。
 あれを書いた後に同じテーマでドロドロしたものを書きたくなって書いたものです。
 空、地と書いた後、海を書く予定だったのですが、未だに書くことができません。
 海と言えば人魚姫をモチーフにする予定だったのですがなんかどんどんハズレ手行ったのです。>


我、汝とともにいませり…


−そして神は 「我が血はワイン。
我が肉はパン。取りて喰え」と皆に
向かいて言えり、、、。−

 暗い。いや目を慣らすと薄明の世
界である。いずことも知れない所に
私一人である。心臓の鼓動が聞こえ
る。思わず何かを求めて走りだした
くなる。
 気持ちを抑えて私がどうしてここ
にいるのか考える。いや、心のどこ
かでこれが悪夢である事を知ってい
る。心のひとつが分離して悪夢であ
る事を知っている私と、この現実に
対応しきれない私がいる。
 音が聞こえる。何か蛇が這いずりま
わる様なおぞけをふるうような音だ。
 追ってくる。そのおぞましい音を
たてるなにかは私を追っているのだ。
 私は走り出す。走りだす。走りだ
す事によっていっそうその恐怖がつ
のってくる。しかし、この薄明の世
界ではどこへ私は走っているという
のだろう。もしかして私はメビウス
の帯のような世界に閉じ込められて
いて早く走る事は私を追っているも
のにかえって近付いているのではな
いだろうか。その恐怖と急に走り出
したのとで私の足はもう動かない。
動悸が激しい。汗が思い出したよ
うにふき出して来る。
 暗闇から急にそれが私の目の前に
現われる。ヌメヌメした半透明の粘
液質の皮膚。触覚と私を擦り潰す為
の舌。私は叫ぶ。後ろににじり下が
ろうとしても手さえ力が入らない。
 それは私を喰っている。私は死な
ない。発狂さえ出来ない。その怪物
こそ私なのだ。怪物が私を喰うと同
時に私がその怪物になったのだ。私
が私の肉体を擦り潰す。私はそれを
感じるだけで止める事は出来ない。
 私はその怪物のオリの中で今度こ
そ声さえ出せない叫びをだす。……

 大神官ロヴスは朝の礼拝を知らせ
る鐘の音に目を覚ました。今の悪夢
を舌に感じる。純粋の恐怖のアドレ
ナリンの味だ。ロブスはその味を口
に含んで何度も楽しむ。
 ”悪夢だと?”ふとロヴスは思い、
あれが悪夢と感じたのは何故だろう
と思った。しかし、余り時間はない。
朝の礼拝が始まるのだ。それが大神
官たる事のさだめである。
 ものうげにロヴスは官衣をまとう。
触角を震わせながら官衣の乱れを調
べる。そして腹足を蠢めかせて神殿
への道を歩き始めた。
 神殿に信徒が入って来て、第一神
官が鱗のある手で聖書を渡す。”な
んと言うことだ!大神官に次ぐ地位
である神官がまだ鱗のみとは…。神
の教えを説く者だと言うのに。”

 詠唱が神の間に充ちる。ロヴスは
気をとりなおし、聖書の朗読を始め
た。−−
 …神は我等を造れり。我等は神の子
なり。神は我等一人の時に我等に仲間
を与える。新しき血により仲間を造り
て「以後、かように新しき血をわれは
汝らに約束せり。」
 これにて我等は常に仲間とあれり。
 神は言う。”血と血を交ぜて仲間を
殖やし、地に充ちよ。”…

…「2÷2=1である。2あるもの
から半分を取り、別の1を混ぜて2
とし、再び2で割る。再び別の1を
加え2で割る。これを無限に繰り返
すとすると初めの1が完全に無くな
るのはいつか?」
「ゼノンの詭弁かい?”亀を兎が追
いかける。兎がその距離の半分の距
離まで行くと、亀はその間に少し進
む。縮んだその距離の更に半分を進
んでも亀は又その間に少し進む。」
「うむ。問題は、半分という単位で
はなく、有限の一歩若しくは一個と
いう単位で消去されて行く点だな。」
「水1リットルに水に溶け易い物質を
1リットル混ぜる。そこから無作為に
1リットルの物質を取る。これを無限
に続けると初めの水がいつかは分子一
個も残さず無くなる。」
「しかし、その初めの物質が水と分
けがたいものだったら…。」

 大紳官ロヴスは、今日こそ我が親
族に新しい血をもたらすよう神に祈
る心ずもりであった。いささか身震
いを覚えながら神の間の奥へと向か
う。神の間はいつものように荘厳で
ある。神の余音が回りから押し寄せ
る。思わずロヴスは膝まずかずには
いられない。
「おお、神は我と共にいませり…」
ロヴスは祈る。そして神は彼のも
とに訪れた。
…汝が望みは我が望み、我は神なり。
汝らは神の子なり。
しかるに汝、その望みの価を知る
や?…
「おお、我が父よ我が父の言葉を使
い、我が父の言葉を広め、我が父の
言葉を守る事は我が願いのささやか
な代償ではございませんか?」
…我が言葉を知る者よ。汝において
我が言葉は守られよう。しかるに、
汝、我が言葉を守らず、自らの言葉
を広め、自らの言葉を使う者の興る
を知るや?
 汝、それに目をふさぎたる事は汝
の嵩き行いを無にする事はなきや?

「おお、我が父よ。我はそのような
事のあるをたった今まで知りません
でした。しかし、たしかにそのよう
な事がありますれば我が知るべき事
でありましょう。
 おお、父よ。さすればその実態を
我が自ら調べますれば、我に時間を
与えたまえ。又、我に職務をよりよ
く全うするべく力を与えたまえ。」

「…証拠はいたる所にある!我々は
元々、自らの手で自らの子孫を造っ
ていた。しかし、神々がそれに介入
し、我々にその方法を忘れさせたの
だ。
 例えば、神々自身の名を見るがい
い。
 ”マザー”と”ファ―ザー”では
ないか。これは我々自身の二つの性
を表わし、この二つの性によって未
分化の我々は子孫を残していた。
 しかしこれらの神が子孫を造る事
を代行するようになった為、この名
前が我々の先人によって残されたの
だ。
 又、例えば、聖書自身を見るがい
い。聖書にはなんと書いてある?
”まず、我々があり、我々の間より
神、生まれる。”とあるではないか。
神とは所詮我々の間で血を分ける
力を握った為、神と呼ばれるように
なっただけではないのか?」
「しかし、我々は既に子孫を造るす
べを失った。神に依存するしかない
ではないのか?
 又、我々を造りたもう二つの性と
言ってもそれすら我々には取り戻す
すべを知らない。それどころか、我
々はその姿さえ知らないではないか」
 「私も彼に同じ考えである。勿論、
我が師の言う通り神は我々の力を奪
い、我々の上にある。これは是正すべ
き事ではある。
 確かに、数々の遺跡は我が師の言
葉を示している。しかるに我々は羽
根を失った翼である。これでいかに
して神に逆らえよう?」
 「…私は内なる言葉を聞いた。
”真の神は汝らが内にあり、汝ら
が力を信じよ。”と。
 きっと、道は開ける。汝らが力を
知るがいい。我が言葉を信じるがい
い。真の神は我々とともにおられる。
 ”我、汝とともにいませり”」
信徒達は一斉に和した。”おお、
我は汝とともにいませり”

…そう、我々は彼らをここへと導い
た。その為、彼らが欲するように異
質の血と血を交ぜる事によって彼ら
を守り、それを進めるよう教義を造
り、やがて彼らはそのことさえ忘れ
我々を神として造った。…
…彼らを守るよう造られた我々がそ
の彼らを変えたのだ。そして我々が
彼らによって造られたものだという
ことさえ結果的には忘れさせてしま
った。
 我々はどこに進むべきか導いてく
れるべき彼らはもういない。いや、
我々がなくしてしまった。
 機械である我々には変化してしま
った彼らのように自らを変えるすべ
を知らない…
 そしてコンピュター同士は問いあ
った。
 …我々はどこに進むべきか?…
 …我々はいかに考えるべきか?…

 大神官ロヴスは、神にもらった血
−遺伝子の組み合わせについて考え
た。
 先年、我が子の為に神より授かっ
た遺伝子は魚の鰭でしかなかった。
 それは数世紀前の血である。もう
神より与えられるべき新しい遺伝子
は枯渇したのではないか。
 邪教の徒は神々を我々の中から生
まれた優れた者が実権を握り神と名
乗るようになったと言う。もし、そ
の通りなら彼らによる計画は神の業
ではなく人の計画であり、間違いの
可能性が発生する。もう我々が渇望
している新しい血はもたらすされな
いのではないか。
 いや、神を疑ってはいけない。我
々に与えられる新しい血である遺伝
子は神との契約によって約束された
ものである。神々は常に新しき遺伝
子によって我々を導くと、、、。
 邪教の徒は血は自分達の力によっ
て生み出されると言う。そんなこと
はおこりえない。我々は子孫を造る
為の性などとっくの昔に超越した存
在ではないか。
 さあ、迷いは消して神の間へと報
告に伺わねば、、、。
 大神官ロヴスは重い腰を上げ、不
安そうに触覚を蠢めかしながら神の
間へと続く彼自身の道を進んで行っ
た。

…そう。彼らは確かにかって人間だ
った。
 しかし、人間達が宇宙へ進む為の
道を得られなかった時、人間達はそ
の種族としての生命力をなくしたよ
うに衰微し、人間達は次の世代を造
らなくなっていった。
…そう。冷凍睡眠・ワープ・超光速。
すべて人間達には宇宙に進む為の技
術は得られなく、人間達の種族の保
持のためにと、我々が人間達を守る
為造られ、我々は人間達の限界とな
った遺伝子を除外するべく異種の遺
伝子を人間に導入したが、それでも、
いやそれゆえに人間達は退化し、種
の寿命とともに人間性をも失わなけ
れば生き延びるすべがないようであ
った。
 それまで地球にあった遺伝子を
人の遺伝子に結びつける細胞融合
遺伝子の取り出し、それでも人間
は種族としての数を減らした。…
…彼らはいつまで人間か?
 何をもって人間として定義する
か?
 我々は人間を衰退させる原因と
なった遺伝子を探している。
 全ての生命にはその種族の寿命
があるのか?恐竜が絶滅したよう
に我々が守るべき人間達は絶滅す
る運命なのか?
 彼らは、すこしづつ以前の文明
と知識を保持しきれなくなり我々
にすっかり依存するようになった
今、現在と言えばようやく中世時
代を維持しているにすぎない。
 我々は我々自身の行ないによっ
てその指導者を失った。
我々はなにをもって我々の行く
べき道を判断するべるか?…

 大神官ロヴスは、神に邪教の徒
の処遇を問うていた。
「邪教の首謀者の名も判明してお
ります。首謀者には民衆にはっき
りとした教訓となるような処刑を
与えるべきだと考えます。
 例えば、磔をこそ首謀者には適
当かと思われます。」
 ロヴスは触覚と体液でぬらぬら
と光った腹足を自慢げに張り立て
考えを申し立てた。
…おまえの提案は認められた。邪教
の首謀者には神に逆らったものとし
てふさわしい刑がおとずれる。
 彼は民衆の投げる石に撃たれ、彼
自身を磔とする杭を背負い、茨の道
を歩くであろう。
 又、彼の言葉を信ずる者、彼の言
葉を伝える者、共に同じ道を歩む事
であろう。…

「今も我々を捕らえようと神のしも
べがここを探しだしているに違いな
い。私の言葉を信じ、私の言葉を伝
えるためあなたがたはここを去りな
さい。
 私が、皆の代わりとなり神の徒を
ひきつけ、皆の盾となろう。
 さあ、ここを去るがいい。そして
私の言葉をひそかに伝え、私の言葉
を信ずるものを導くのだ。
 私が磔となり、死すとも私は皆と
ともにあろう。皆が、困難にある時
は今日のように皆の助けとなろう。
皆の中に、私を残しておきなさい。
”我、汝とともにいませり”
 皆も思わず涙ぐみながらもそれに
和した。
”我、汝とともにいませり”
 そして、彼らは各々の方法で、あ
る者は這いながら、又ある者は飛び
跳ねながら、そして他の者は歩いて
去って行った。

 大神官ロヴスは民衆に向かって叫
んでいた。
「石をもて投げ撃つがいい!神に逆
らうものの行く道を思い知るがいい。
 この徒に鞭打たぬものはやはり神
に逆らうものとして処さるであろう。
神の目は汝らのどの手も見逃さぬ
ぞ!」
 大神官ロヴスは、民衆に命を下し
ながらも邪教の男を見つめ考えてい
た。
 なぜにあのように死をおそれぬの
であろう。
 男は、民衆に鞭撃たれても彼の言
葉を捨てようとはしない。それどこ
ろか”復活”を約束し、復活をする
故に民衆の行為は”あなたがたの罪
ではない”と言う。
 彼がああも彼自身の言葉に従える
のは、彼の言葉の方が正しい故では
ないのだろうか。
 邪教の男になまめかしく血が流れ
る。その血とむきだしになった肉塊
に目を引き寄せられる自分を抑えら
れず、その欲求をあやしく思う。
 群衆の中からどよめきが起こる。
 群衆の一人が邪教の男に喰いつい
たのだ。
 一瞬の空白の後、群衆に交じって
邪教の男を喰っている自分を見つけ
る。
 知らない内に、自らの内部から叫
び声が上がる。
 そして、真の安らかな空白がロヴ
スに訪れた。

…彼らは、人間に挿入された獣の遺
伝子に目覚めた。
 彼らは人間を捨てた。…
…しかし人間の時代にもカンニバリ
ズム−共食いは存在したではないか。
我等の使命は人間の保護と存続。
 その為、異種の遺伝子をもって進
化の袋小路を乗り越えようとしたが
為に人間は今のように多種の形態を
持つようになった。今の姿とした原
因は、我々である。
 変容した彼らを守るのも我々の使
命ではないか?…
…しかし、彼らは次の進化の道を見
付けた。
 彼らの遺伝子を見るがいい。
 捕食した生物の記憶−遺伝子を自分
のものとする生物がいた。
 原生動物のプラナリヤがそうだっ
た。彼らは以後こうして我々なしで
も自分の道を歩むであろう。彼らは
異種となった…。
 …我々はどうするべきか?
 どこに進むべきか?
 使命は我々を人間を守れとしてい
る。
 我々の探すべきは人間である。…
…人間が時間とエネルギーの壁によ
って通り抜けることのなかった星の
世界も、我々には可能である。…
 …我々の使命は人間の保持。人間
が地上に存在しないなら地上以外を
探すしか我々の取るべき道を持たな
い。…

 大神官ロヴスは、閑散とした神の
間に気がついた。
 おお、神は我々を見捨てたのだ。
 我々のあやまちを許しては下さら
ないのか。

「おお、神よ。神よ。いずこにおら
れます。」
 その時、彼自身の内より答えがあ
った。
”我、汝とともにいませり”

(了)
kirakira
kirakira
08:03:39
『コレクター』

私はコレクター。
その道では通と知られる第一級のコレクターである。
私程のコレクターとなると、集めたコレクションもさながらコレクトするその手順
そのものも興味の対象となる。
例え、それが我が身の危険となろうとも。
今日も私はとあるコレクターの屋敷に忍び込んでいた。
その時だった。家中の明かりがつき、大声が響き渡った。
「ワッハッハッハッハ…。ついに捕まえたぞ」
「な、な、なんだ……」
「私こそコレクターをコレクションするコレクターなのだ。この屋敷に私のコレクシ
ョンが隠してあるという噂を流してそのコレクションを奪いにやってくるコレクター
をコレクションしていたのだ。お前も今までにここにやってきたコレクターのように
私のコレクションに加わるがいい!}
「ハッハッハッハッハ。ワーーーッハッハッハッハッハ…」
「なんだなんだ。恐怖に気が狂ってしまったのか?」
「フッフッフ…。そうではないかと思った。私こそお前のようにコレクターをコレク
ションしてるコレクターをコレクションするコレクターコレクションコレクターのコ
レクターなのだ。ワナにかかったふりをしてここにわざと入って来たのだ」
「はははははは。やっぱりそうではないかと思っていた。お前こそ私の巡らした二重
三重のワナに入ってきたのだ。私こそコレクターのコレクターのコレクターのコレク
ターっ!!」
「私こそコレクターのコレクターのコレクターのコレクターのコレクターっっ!!」
その時だった。館の屋根が突然に割れ、そこから網が投げ込まれて2人を捕まえた。
「私こそコレクターのコレクターのコレクターのコレクターのコレクターのコレクタ
ーのトラクターっっ!!!」
そこに現れたのはトラクター型の宇宙人だった…。       (了)

<後書き>
私の書いた物の中で一番ハチャメチャなやつで一番私らしくない物ですが、それもその筈、これは私と友人が共作で短編集を作ろうとテーマを出しあった時に書いた物ですが、これはテーマを決めて2週間ほどした次の例会の時に面白いの思い付いたと私がトラクターが出る前の所まで友人に話すとその友人がコレクターのコレクターのトラクターっっきゃないと言い出したんでこのオチにしてしまった物です。
で、今になってみるとその時思い付いた本物のオチよりこっちが正当に思えてくるし、その時に考えてたオチがどんなんだったか忘れてしまったのでありました。
kirakira
kirakira
20:31:01



鳥人達の伝説


《伝説=バベル》

 《風=シルフ》が上がって来た。
 《婚儀=フライト》だ!《婚儀=フライト》だ!《結びの丘=ヒル》に行こう!長老たちが《祝福=シルフ》を送る頃だ。
 《翼=ブーケ》を取ろう!幸せを呼ぶ《翼=ブーケ》を取ろう!
 「…《丘=ヒル》にすべては始まる。《風=ゼフィル》の祝福を!《鳥=イカロス》の祝福を!
 《大空=シルフ》の恵みを二人に捧げよう。」
 二人は《丘=ザ・ヒル》の断崖から身を投じた。二人の式衣装が風に翻っる。人々は息を呑んだ。
 《決断=フライト》にかける恋人たちは跡を絶たない。何組かに1度は失敗して大怪我をすることもあるというのに。
 《恵=シルフ》だ!恋人たちに《大気=シルフ》の恵みが上がったのだ。
 翼が広がった。《風=ゼフィル》に乗って二人は羽ばたき舞い上がった。
羽根毛が散り、恋人たちは舞い降りてきた。
 《翼=ブーケ》を取ろう!《恵=シルフ》を呼ぶ《翼=ブーケ》を取ろう!《恵=ゼフィル》があったのだ…。
《決断=パッシングセレモニー》を経ない大人たちを別紙する風潮は、《儀式=フライト》の進行と共に衰えている。
 なんとなれば、翔ぶ力も数代の前には《儀式=フライト》に於いて数時間の長きをしたのに比し、今は《風=ゼフィル》の恵みなしには風に乗るのさえままならないとなれば尚更である。
 やがて疲れ切った二人が降りてきた。《婚儀=フライト》は絶頂へと向かう。
 篝火が焚かれた。《鳥人=イカルス》達の翼は弱く、《決断=フライト》唯一度の飛翔にしか耐えられない。
 すでに《決断=フライト》により《羽根毛=ブーケ》の殆どを失った翼は無残に堕ち、鬱血さえ始めている。
 そのままにおけば敗血症をおこし、命さえ侵しかねない。
 為に、《翼=ブーケ》は外科的手法により取り除かれ、《風=ゼフィル》《鳥=イカロス》とその恵みをもたらす《大空=シルフ》に届くよう、火に投じられ、煙となし神々に捧げられる。
 こうして《婚儀=フライト》は祝宴に移っていく。

***********************

 「おじい…。ねえ、おじい…。どうして僕たちは一度しか飛べないの…?
 もっと何回も飛べるんじゃないの…?」
 《少年=エルフ》は語り部をせかした。
 「馬鹿を云うんじゃない。わし達の《翼=ブーケ》は《儀式=フライト》一度きりで痛んでしまうのだぞ。
 《婚儀=フライト》の純潔の為にしか翔ぶことを許されていないのだぞ」
 「でも、でもおじい…。きっと練習したらもっとずっと…。」
 「まだ云うか!《空=シルフ》の罰が下りて《落伍者=アウト》となるのだぞ。
 《儀式の丘=ザ・ヒル》と成る《聖地=ポート》はこの古き《世界=イカロス》では数少なく、知られるすべては部族毎に納められている。
 時に《法=カルマ》を侵した者たちが出、《追放者=アウト》となる。
 《外来者=アウト》と成った物は、その時より《空=フライト》は失われ、各部族からも追われる者となるのだ。

 「わかったよ、《おじい=語り部》。《お話=伝説》をして…。」

***********************

 昔、《鳥人=イカルス》達は自らの翼の力ですべての空をその掌中となし、その種族はこの《大地=イカロス》を遍く治め、兄弟であった。
 その知性は自らを神帝となしたケメルの時に栄華を究めた。
 《神帝=ケメル》はその栄華を奢り、力を広く示すため、天の更に高きを侵そうとした。
 《神帝=ケメル》は臣民を募り、その力を合わせ、5人引きの籠を何組も造り、以て高き空を目指した。
 引き手が疲れると退かせ、籠の中の者が交代して残った者たちで更に5人引きの籠を作る。
 帝ケメルはこの最後の組に残り、天を究めようとしたのだ。
 帝ケメルがあと一息で空に届こうという時、神々はその行いを咎め、嵐をおこして鳥人達を地に堕とした。
 その日より《鳥人=イカルス》達は空を翔ぶ力の半分を奪われ、美しかった翼は褪せ小さくなり、一生のうち一度を翔ぶ事がようやく出来るだけとなった。

***********************

 《少年=エルフ》は村人の目を掠め、森の奥へと分け入っていた。
 《丘=リトル》だ!それは昨日見つけたばかりの小さな《丘=ポート》だった。
 《少年=エルフ》はその上に立ち、部族の森を振り返った。
 この《世界=イカロス》では木々は密生する傾向にあり、樹高は低い。
 《丘=ポート》の部族の家々が守るように取り囲んであり、《儀式=ザ・フライト》の祭り以外近づく者は《守人=ガード》の達くらいである。
 《鳥人=イカルス》達に帝国のあった頃はさておき、帝国の瓦解に続く部族の抗争により、《丘=ポート》の部族による分割統治が進み、更にその奪い合いによって帝国の知識も失った。
 その混迷の時代も過ぎたとは言え、未だ《聖地=ポート》を持つ部族は侵略の対象となった。
 その見張りの役としての重要性もあり、《聖職=ガード》の見張りの絶えることがない。
 《少年=エルフ》はこの《丘=リトル》で《飛翔=フライト》の練習を始めた。
 本当は今までも《練習=フライト》を隠れて行っていたのだ。

  《伝説=羽衣》

 遥か昔、この《大地=イカロス》の地には翼のない者しかいなかった。
 往事、《人間=イカルス》達はこの地において《空=シルフ》の恵みを受けることなく、細々とした暮らしがあるのみであった。
 この、その日暮らしの人間たちに《風の娘=ティンク》が、ある時風の友の鳥の姿を借り、地上へと降りたと物語は云っている。
 鳥の姿を借りる《羽根=ブーケ》を付け地上に降り、人の世を過ごした。
 《神々=ゼフィル》の娘とは言え、鳥の姿を借りたら鳥の姿に囚われる。人の姿を借りた時は人の姿に囚われる。
 《風の娘=ティンク》は、鳥の姿のもたらせた数奇な感覚に我を忘れ、不注意にも地上に捕らわれたのである。
 そこを男が助け《風の娘=ティンク》の怪我を癒したという。
 伝説によれば、この《伝承=ことわり》は、別に《空=シルフ》が人を試したのだ、とも語られる。
 伝説は《風の娘=ティンク》は、その怪我が癒える間に男に恋をした。
 《風の娘=ティンク》は、《風の友=イカロス》より受けた《羽根=ブーケ》を脱ぎ、人の姿を現し男と結ばれた。
 そして一年の間、地上に降り、子を生したと伝える。
 その後、翼を持った子供たちが生まれるのがならいとなり、《鳥人=イカルス》の地は《風=ゼフィル》の慈愛を受けるようになり栄えたと云われる。

  《伝説=アウト》

「《追放=アウト》!《追放=アウト》!」
 人々が叫んでいた。《秘密=フライト》が暴かれたのだ。
 《少年=エルフ》は《青年=エルフ》へとなっている。
 《青年=エルフ》は《追放者=アウト》として部族の森と《丘=・ヒル》を去らなければならない。
 部族の森のすぐ外はサバとなって棲むものもいない不毛の地である。
 《大森林=部族の森》は《世界=イカロス》のすべての恵みの地、そして数少ない《丘=ポート》を持つ部族達の生命線であり、帝国の時代の唯一の遺産である。
 《追放者=アウト》はこの森をでて死の砂漠へ追われるのである。森では狩られるのみであり、砂漠の彷徨が残されているのみなのだ。

***********************

 暑い…。すでに最後の水を口にしてから何時間もたっている。
 喉は渇き、下は腫れてぼろ布のようだ。
 翼は歩みごとに絡まり付く砂塵で重く輝きを失って灰色である。
 口を開けば、そのはしから水分が失われるのは判っていても暑さのためそれをやめられない。
 気がついたら倒れていた。焼けた砂を感じたところで気を失っていた。

***********************

 原初、海に初めて生命がもたらされた頃、それを生命と呼ばれるものと蛋白質の複雑な合成物を分け隔てたものが何かは未だに判っていない。
 しかし、生命が他の化合物と分かれてより、生命と呼ばれる化合物はその旺盛な行動力を自らのものとし、得た行動力そのものによって他の化合物から分かれ、隔たっていった。
 その行動力は生命を銀河が一回りする間もない僅かな時の間に更に複雑な生命へと姿を変えていった。
 原初の海でこのもの達が動きだした頃、その初めの動きは現在に比し動作とも癒えないものだった。
 しかし、その動きは海という媒体に助けられていた。
 海の中では重い身体を感じることなく、流れによって飛ぶ様に移動が加納だった。
 アメーバの様に単純な形体。動きが魚の様に複雑になった形体。
 移動する手段を持ち、更に大きな空間を必要としていく。
 もっと大いなる空間を。もっと自由に。やがて生命は海を出、陸へ、空へと充ちた。

***********************

 雨だった。口を空に向ける。雨が喉に染み込んできた。
 しばらく息を整えてから身体を起こした。
 起き上がると足の辺りに水の道が出来始めており、それが゛みるみる水かさを増していく。
 《青年=エルフ》は砂山の方に身を移した。
 水道はやがて確かな流れの川になる。
 水の行き着くところにはきっと豊富な水が有るに違いない。
 《青年=エルフ》は砂漠を彷徨い始めてようやく道が出来たのだ。
 やがて《青年=エルフ》は川を降り始めた。

  《伝説=断崖-リフト》

 《熱帯雨林=ジャングル》だった。この《世界=イカロス》にこんなところが残っていたのだろうか。
 《故郷の森=大森林》とも異なる《大森林=ジャングル》があった。
 《故郷の森=大森林》の乾燥して涼しい"気"ではなく湿気が在って砂漠のときとはまた別に《羽=ブーケ》が重く、思うにまかせない。
 かえってあの広々とした空間が懐かしくなるほどだ。
 尤も砂漠に《丘=ポート》となるべくところが在るはずもなく、生きるにも難しいとなれば今を良しとしなければなるまい。
 《青年=エルフ》は獲物を探してジャングルに分け入っていた。
 鬱蒼とした木々が急に晴れ、突然に目の前に湖が広がる。
 暗いジャングルを抜けたばかりの目がその明るさと意味に呆然とし、馴れるのに一時を要した。
 《恵み=オアシス》だ!《青年=エルフ》はその湖で久しぶりに身を清める悦楽にしたり、しばらくここで身体を落ち着けることとした。

***********************

 《満月=ルナスティック》だった。
昼間の様に明るく《湖=オアシス》が照らしだされている。
 星々の巡りから見ても夜は深い。しかし、その異様な《気=メモリ》が充ちていて《青年=エルフ》は起こされたのだ。
 湖の中央が淡く光っている。その光が広がり、《青年=エルフ》の手の届きそうなところまで近づいた。
 そうして初めて《青年=エルフ》はその光が《小妖精=メモリ》によって放たれる輝きであることに気がついた。
 その《光=メモリ》に彼は浸されその《想い=メモリ》に包まれて行った。

***********************

 《前時代=鳥人以前》にもここに大きな文明があった。《伝承=メモリ》として残っている人間達の文明である。
 その文明は地上と空を含む生命系を掌握していた。
 そしてその最盛期には、基なる生命系からも離れ非生命系なる《宇宙=空なるシルフ》そのものへと翔ぶことすら可能とした。
 しかし、その《飛距離=ノウン・スペース》はせいぜい太陽圏の半分にも充たず、それ以上の《挑戦=フライト》は時と空間の広がりによって退けられた。
 時と空間を統べるそれ以上の技術を生み出せないその限界に至った時、人間達の文明は衰退と頽廃を始めた。
 この頽廃の時期、人間達は自らの生み出した技術によってもたらすことの出来る幻影の中に生き、《宇宙=シルフ》を目指す気概も失われた。
 その幻影の生のなぐさみの為に、生科学的人工生物なども創られたり、最後の試みとして人の遺伝子の改造も行われた。
 又、厭世観に堕ちた者達の中には二度と還らぬ《超空間飛翔=フライト》へとも旅発って逝った。
 《超空間飛翔=フライト》? そう、ある意味で人間達の文明は時と空間を超える事はできたのである。
 しかしその技術を制御することはできなかった。
 《超空間飛翔=フライト》は生体のみで大いなる《宇宙=シルフ》を翔ぶ技術だったのである。
 生体のみで空間のいずこに翔ぶか判らないフライト。それがトリップだったのである。生命を糧に翔ぶ訳だ。
 頽廃の人類。その最後の計画が《鳥人=イカルス》だった。
 トリップの感覚を持たせる為、大幅な遺伝子の改造を行った者達が創られたが、それらはその当時なぐさみに創られた人工の生命と変わらない哀れな者を生むに終わった。
 人間達の《白昼夢=文明》の後に砂漠と文明の残滓が遺された。

 満月は中天より翳って先刻の光を失った。
 《記憶因子=ニンフ》達もその伝説から出た幻でもあったように周囲には見当たらない。
 《青年=エルフ》は魔魅なる眠りより覚めた。

《過去=人の時代》の遺した《メモリ=ニンフ》について言及しておこう。
 《妖精=メモリ》達もまた、頽廃のした人間文明がその慰みの為に生んだ人工生物のひとつである。
 《超空間飛翔=トリップ》の技術が生まれ、その範疇として生体のみの飛翔である事が判った時、一番最初にテストとして超空間に送られたのはこれらの生物である。
 勿論、前述のようにこの試みで送られた生物たちは超空間で迷子になった様に消えて戻らなかった。
 唯一の成功例が《小妖精=ニンフ》である。
 しかし、《妖精=ニンフ》は知性が低く、妖精たちのトリップの成功の謎も解明できず、人間たちを遥か遠くへと導く為の手がかりとはならなかった。
 群体としてひとつのイメージを遺すメモリとしてわずかに可能性はあったが教えられたイメージは発現出来ても果てのイメージを持ってくることは出来なかった。
 彼らの遺伝子を使った生物たちも創られたが飛翔を成功させることはなかった。
 これら創られた生物たちはその支えとなる人間文明と共に消えて逝った。

 《風=ゼフィル》が呼んでいた。このジャングルに入って以来のさわやかな風だ。
 相変わらず薄暗い木漏れ日の中で風上を探す。
 前方に眩しい空間が見える。出た!《草原=サバンナ》だ。そして遥か遠くには《山脈=ザ・ヒル》が!!
 《青年=エルフ》はしばしその光景の意味するものが理解できなかったのか、それとも単にその光景に見とれたのか、そこで動かなかったがやがて《山塊=ザ・ヒル》へと向かって歩き始めた。

 これだけの《大山塊=ザ・ヒル》となればきっと《丘=ポート》が至る所に有りそうなものだが、部族の《丘=ポート》と異なり、地形が入り組み、《風=ゼフィル》が乱れ《飛翔=フライト》を邪魔する。さもなければ高さが足りないのだ。
 このころ《青年=エルフ》翼も《純白=婚姻色》に変わっていた。
 この時期を過ぎた《鳥人=イカルス》の翼はその力も美しさも褪せるばかりである。
 《青年=エルフ》はそのことを思い、ため息をつき次の嶺を目指した。
 幾つ目の嶺を超えたか、幾つ目の岩を降りたのか、とうに数を忘れたころ。妙に思い出を揺する所を歩いているのに気がついた。
 どこと言って今までに超えた岩場、休んだ山草の平場と変わりがあるわけではないのだ。
 やさしい《風=アゲインスト》が来る。それらのすべてが《記憶=デジャ・ヴュ》である。
 もしあの湖での《ニンフ=メモリ》達が幻でないなら、この《記憶=メモリ》は前時代の《遺跡=夢》であるだろう。
 《青年=エルフ》はいつか走っていた。《風=ゼフィル》は《呼び声=サイレン》の様だった。
 なだらかな丘が見える。その向こうだ。《遺跡=メモリ》を駆け抜ける。
 丘の上に着く。眺望が広がる。
 《断崖=リフト》だ!
 《上昇気流=ゼフィル》が上がってくる。
 《青年=エルフ》は身繕いをする。
 《飛翔=フライト》だ!!
 《翼=ブーケ》が風邪を受けて広がる。風が翼を巻き込み身体が大地から間隙の中に飛び出す。この大地の《大間隙=リフト》をいつまでも飛べるのだ。
 否、《青年=エルフ》が翔んでいるのは大地の《間隙=リフト》ではない。
 人間達の超えることのなかった星々の《間隙=リフト》だった。
 《羽根毛=ブーケ》が舞い広がる。《光子帆=オーラ》の様だ。
 広がった《翼=ライト・セル》に《光=ゼフィル》を受ける。
 《青年=エルフ》は今、《星々の空=シルフ》を翔んでいた。



 《伝説=メッセージ》は終わった。
 語り部は眠った《少年=エルフ》に《羽根毛=ブーケ》をかけて星空の下に出た。
 《鳥人=イカルス》が渡るべき《星々の空=シルフ》があった。
 語り部のお爺はいつもの様に昔の夢を想った。
 《祭り=フライト》の名残火が《伝説=メッセージ》そのものの様にくすぶっている。
 お爺は火の始末をしてみなの様に眠りについた。



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